レーザ変位計でガラスの厚みを測る
(その2:準備編)

2025.05.08
レーザ変位計でガラスの厚みを測るその1では、ガラス(透明体)の厚みを測る際に関連する原理と、レーザ変位計の仕様に依存する正反射角度について触れました。今回は、決められた角度から実際に計測できるかどうかの見極めを行います。

レーザ変位計でガラスの厚みを測る際の入射角度

拡散反射受光タイプでのレーザ変位計を正反射光受光(モード)で使用する場合、その正反射角度は、拡散反射モードの受光角度がそのまま適用されます。言い換えますと、入光角度はその半分になります。同様に、もし受光角度が25度の場合には、正反射の入射角度は12.5度となり、測定に使用するレーザ変位計の光学的・構造的仕様により正反射の入射角度を判断します(図1)。

すると次は、それによるガラスの表面反射率が懸念事項となります。0次反射光もさることながら、1次反射光の光強度が弱すぎるとイメージセンサがそれを検知できなくなるからです(図2)。

レーザ変位計でガラスの厚みを測る際の入射角度による反射率

ガラスの表面反射率は入光角度により異なり、垂直に対する入光角が小さいほど反射率が低くなります。その反射率を予測するために、フレネルの法則(Wikiリンク)から、次の計算式を導き出します。

Rrefは、入射角が0度の時のみの計算式で、他の角度の反射率を予測する場合、フレネルの公式からS偏光とP偏光の反射率を任意の角度に対しそれぞれ計算すべきです。しかしここでは大体何%反射するのかを知りたいため、0度から20度間の反射率に大差がないことだけを確認します。上記Rrefにガラスの屈折率N2=1.57(N1=1)を代入し計算すると、表面反射率は約5%(4.92%)@入射角0度となります。

他の参照値として、入射角20度のガラスの反射率が知りたいため、JIS Z 8741(鏡面光沢度‐測定方法)の5章を読み解きます。これによると、基準となる鏡面光沢板ガラスの反射率は、入射角20度時、4.91% であるとされています。同じ屈折率を持つガラスの反射率は4.89%@0度 ≒ 4.91% @20度と見なすこともでき、入射角度0度から20度までの反射率は約4.9%、あるいは約5.0%と言えそうです。一般的なレーザ変位計では、レーザ最大出力時の約1%の反射光を内蔵CMOSが捉えることができるため、正反射モードでの0次反射光量が全レーザ出力の5%あればOKです。

次に、ガラスの裏面で反射する1次反射光は、どのぐらいの光量を持つと考えられるでしょうか?測定対象となるガラス内部での光吸収率を0%として考え、レーザ最大出力を100とした場合、ガラス表面で反射する光量が5%とすると、0次反射の際には全体の約95%が透過したと考えます。裏面でその95%分の5%が反射し(4.75%)、残りが裏面を透過します(90.25%)。さらに、裏面反射光が表面で反射光と透過光に分光されます。概算すると入射光量の4.5%が1次反射光として、レーザ変位計CMOSセンサへ届けられる算段となります(図3)。

ガラス(透明体)の光吸収率

上記、1次反射光の光量の概算は、ガラス(透明体)が光を吸収しない場合を仮定しています。しかしながら、実際、透明体はその化合物により光吸収率が異なります。また、同じ透明体であっても、光の波長によりその吸収率も異なります。一般的な1mm厚の窓ガラスの光吸収率が1%以下とされているため、1次反射光量がレーザ最大出力の3.5%だったとしても、計測可能です。

反射光の角度とレーザ変位計のビーム幅

拡散反射のレーザ変位計を正反射設置で使用する場合、その角度は拡散反射時の半分となります。拡散反射時の角度仕様が小さい場合、同じ厚みのガラスでも、正反射設置での入射角度が12.5度で屈折率が1.5の場合、ガラス内部での屈折角度が約8.3度になります。そして、そのレーザ変位計で1mm厚のガラスを計測した場合の0次反射と1次反射の差分(見せかけの厚み)Δpは、0.28 mmとなります。当然、ビーム幅1mmのレーザ変位計ではΔpの検出が困難であることが予想できます。

0次反射光と1次反射光の距離的差分を検出の判断基準は、ビーム幅になります。入射角が20度以下の場合1mm以下のビーム幅を持つレーザ変位計が必要になります。

レーザ変位計でガラス(透明体)を測定するテクニックについては、以下記事で解説していますので、併せてご覧ください。

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