測定誤差はなぜ生まれる?高精度で測定するための注意点

2024.06.13
長さ、角度、重さ…など、あらゆる種類の測定において、どんなに高精度な機器を用いたとしても測定誤差は必ず発生します。
本記事では、測定誤差が生まれる要因とその種類、可能な限り高精度で測定するための注意点などについて解説します。

測定誤差とは?その定義

測定誤差とは、一般的には、測定値から真値を引いた差分を指します。
式で表すと、次のようになります。

測定値 ‐ 真値 = 測定誤差 (JIS8103:2019)

ここでいう「真値」とは、図面寸法や指定重量等々の製作物に求めたい物理量(設計値)ではなく、製作物が現実に持っている物理量です。それを測定した量としての「測定値」、その差を「測定誤差」として記録します。

測定誤差は、問題なのか

物を作るとき、設計者は狙う大きさや重さを設計上決めますが、完成品の真値がいくつなのかがわかりません。そのために計測するわけなのですが、その測定方法や測定器の精度に疑問が生じます。我々は、正しく測定できているのでしょうか?真値が未知であって、その上、測定には誤差が含まれるとなると、何をもって正しく測定できるといえるのか?結論から言いますと、真値をみつけることはできません。しかし、測定誤差を分析して、必要に応じて誤差となる事柄を排除することで、真値に近づくことはできます。

真値が未知である以上、精密で正確な測定のためには、測定誤差の要因を分析して把握し、必要に応じて排除します。これにより、将来的な誤差の発生を予防することや、的外れな品質 向上の努力を回避することが可能になります。

誤差が問題ではなく、どこまで許容できるかが問題

ここで今一度、上記で前提とした測定誤差の定義に 現実を反映させます。

真値 ≒ 測定値 - (測定)誤差

測定誤差が0に近づけば、測定値が真値に近づけると言い換えました。しかし、もう一つの現実問題として、すべての測定には必ず誤差が伴います。どんなに高性能な測定機器でも、機器自体の測定精度限界や測定時の外的要因が影響して、完全に誤差のない測定は現実的には不可能です。

そのため、測定誤差の存在自体が問題なのではなく、その誤差が、目的に対して許容できる範囲内かどうかという観点が重要となります。

許容誤差

異なる言い方をすると、寸法公差や幾何公差がそれにあたるかと思われます。例えば、機械部品の製造において、測定寸法が、設計目標値から±1mmの範囲内であれば許容されると設定したならば、それを完成品への品質基準とします。

測定誤差を知ることで、品質がみえてくる

真値が未知である以上、精密で正確な測定のためには、測定誤差の要因を分析して把握し、必要に応じて排除します。これにより、将来的な誤差の発生を予防することや、的外れな品質を向上の努力を回避することが可能になります。

測定誤差の3種類

測定誤差は、主に「系統誤差」「偶然誤差」「過失誤差」の3つに分類することができます。それぞれ発生要因が異なるため、種類によって誤差を小さくするための対策も変わってきます。

系統誤差

系統誤差とは、測定の過程において一貫して発生する偏り誤差のことを指します。

系統誤差は、測定機器の精度や測定方法、環境条件等が原因で生じ、後述の偶然誤差とは違い、測定結果が特定の方向に一貫して偏る特徴があります。これは、高精度測定器を用いて測定したときに見落としやすい誤差です。同じような結果をだす高精度な測定であっても、真値を示す正確な測定ではないのです。

また、光学機器の系統誤差には、「機械的誤差」「光学的誤差」が含まれます機械的誤差は、測定機器の機械的・構造的な部分に起因する誤差です。測定機器のもともとの精度、機械部品の摩耗や劣化、温度変化による機械部品の膨張・縮小などの影響で生じる誤差を指します。光学的誤差は、光の特性による誤差です。偏心、角度誤差、迷光、レンズやプリズムの特性などが原因で生じる誤差を指します。 

偶然誤差

偶然誤差は、測定を繰り返すたびに異なる値を示す不規則な誤差のことを指します。これは、測定の過程でランダムに発生し、前述の系統誤差とは違い一貫した方向やパターンを持たず、理想的な測定環境でも発生するため、原因の特定をすることが難しいことが多いようです。

偶然誤差が生じる原因はさまざまなものが考えられますが、必ずしも原因を特定し排除する必要が無い場合もあります。できうるだけ同じ条件での測定回数を増やし、その結果の平均値と標準偏差値を見出すことで偶然誤差の影響を、統計上、最小化することもできます。

過失誤差

過失誤差は、測定者の不注意やミスによって生じる誤差のことを指します。具体的には、測定手順の誤りや機器の誤操作、データの記録ミスなど、人為的な要因による誤差です。

機器の取り扱い方法やキャリブレーションなどの設定、測定結果の入力ミスや演算時の計算ミスなどさまざまな要因が考えられ、手順を標準化したり、チェック体制を強化したりといった対策で発生を抑えることが大切です。測定器を定期的に校正をしていないことも、過失誤差につながります。

測定誤差を可能な限り抑えるには?

偶然誤差と過失誤差については、検査体制の問題と言えるでしょう。特に、異常値への対応が、その会社の企業文化を表しているとも言えます。

高精度な測定機器を使う

系統誤差の抑制は、高精度な測定機器と測定環境を整えることにつきます。当然のことながら、測定機器の精度が低いと、測定結果に生じる誤差が大きくなりますが、許容範囲であれば適材適所ともいえます。一方で、高精度な測定器を悪環境で使用しても、その測定器の実力を発揮できないこともあります。

高精度な角度測定なら「オートコリメータ」

長さ、角度、温度…など測定の種類はさまざまありますが、なかでも角度の測定を高精度に行いたい場合はレーザオートコリメータを使用すると高精度に測定ができるためおすすめです。

レーザオートコリメータなら、光学原理を用いて測定をおこなうため小数点以下の細かい角度測定を簡単に行うことができ、従来の分度器などの器具を用いた測定方法と比べて高い精度での測定が可能です。

また、非接触で角度を測定できるため、製品を傷つけたり測定時にズレを生じさせたりといった心配がなく、レーザを当てるだけで測定できるため角度測定にかかる時間を大幅に短縮できるというメリットもあります。
角度測定にレーザオートコリメータを用いるメリットについて、より詳しく知りたい方はぜひ以下の資料もご覧ください。

お役立ち資料

高精度な角度測定を実現する
レーザオートコリメータの3つのメリット
機械設計者や光学設計者は角度測定を行う際に、ゲージ・ピックを用いたり、自作の光学測定器を用いたりして目視で測定しています。 しかし、目視による角度測定はデータ化が困難、光学系の内製に伴う専門知識とコストの問題、そして複数点の精密測定の難しさといった課題を抱えています。本資料では、このような角度測定の課題を解決し、高精度な角度測定を実現する方法としてレーザオートコリメータを用いるメリットを3つご紹介します。
資料をダウンロード