変位計などのセンサに使用される
通信規格とは?最適なものの選び方も解説
今回は、日本で代表的な産業用通信規格の種類と違いについて触れ、センサの通信規格へのお悩みを解決します。
センサの通信規格の種類
通信規格とは、異なる機器同士がデータのやり取りをシームレスに行えるように通信手順を規格したものです。通信規格には、大きく分けて3つの規定があります。
①物理規定
主に通信部の物理層とデータリンク層を指し、目に見えるところのケーブルの限界長や通信速度上限、接続可能台数(スレーブ数)が決められます。例えば、RS-232Cの最高速度は115200BPSで、その際のケーブル長の限界は10m以下とされています。
②通信プロトコル(アプリケーション)規定
主にデータ通信を行うためのソフトウェアの規定です。PCソフトウェアでデータ通信を定義し、データドリブンな自作プログラムを走らせるためには、最低でもアプリケーション層の通信プロトコルを理解している必要があります。
③マスターとスレーブの関係
通信プロトコルで接続される機器の上下関係性を明らかにしておく必要があります。一般的に、PLCなどの上位コントローラが接続された計測器やモータドライバへ指令を送り操作するため、制御する側がマスター、制御される側がスレーブという名称で呼ばれます。
(マスター/スレーブという言い方は、忌まわしい「奴隷制度」の差別用語でもあるため、通信機器業界やロボット業界であっても、公の場では使わないことが推奨されています。このコラムでは、以後、マスター=「ホスト」、スレーブ=「クライアント」と呼びます。)
多少例外的に、通信プロトコルのみを規定し、物理的規定はRS-232CやRS-485が使用されることを想定している通信規格がります。例えば、Modbus通信規格のように物理的規定はEthernet、通信プロトコルをTCP/IPとし、その上でのクライアントのセンサや上位機器の振る舞いを規定した規格があります。
変位計などに使用される代表的な通信規格
変位計などに使用される通信規格としては、以下のようなものがあります。
表1 代表的な産業通信規格の一覧
*Modbusの速度や距離、局数(理論上は247台)は各プロトコルの規定に従います。上表は代表的な数字となります。
以下で各仕様について詳しく説明します。
①CC-Link
Control & Communication Linkの略称で、三菱電機株式会社によって開発されました。
RS-485をベースに開発されており、最高10 Mbpsの高速伝送と、最長1200 mの伝送距離(伝送速度156 kbps時)を実現しています。
また、最大局数は64台であり、各子局との通信データは種類ごとにプロファイルという仕様で定義されています。このプロファイルを上位コントローラに追加することで、異なるメーカーのセンサが混在した状態での接続も可能となります。
➁CC-Link IE
CC-Linkの関連規格としてCC-Link協会により開発されました。物理的規定はギガビットEthernetがベースとなります。CC-Link IE では、コントローラネットワーク用のCC-Link IE Controlとフィールドネットワーク用のCC-Link IE Fieldがあり、この両者は混在できません。
CC-Link IEの接続方法や通信速度、接続台数に違いを下の表にまとめました。
表2 CC-Link規格の内訳
CC-Link IE Controlは単位時間でのデータ通信量が多く、多数のクライアント機器をPLCなどの上位コントローラでネットワークを構築するのに向いていますが、データ通信の信頼性を確保するために専用機器で構成された専用配線が必要となります。
CC-Link IE Fieldは、I/O、センサ、インバータなど制御機器とのネットワークを構築するシステムに向いています。また、CC-Link IE Controlとは異なり、市販されている一般消費者向けのEthernetケーブルやEthernetハブが使用できます。
➂Modbus
Modbusの通信規格には3つの特徴があります。
1.Modbus通信は、プロトコルのみの規定となります。但し、2つの異なる物理的規定への対応を明示的に区別するため、「ModbusRTU」、または、「Modbus/TCP」と明記されます。一般的に「Modbus」とだけ記載されている場合、RS-232CやRS-485などシリアル通信で接続するケースが多く、その場合、ModbusRTUと同様の物理的規定と解釈します。一方、「Modbus/TCPと明示されている場合は、Ethernet規定で通信できることを指します。
2.Modbusは、ホスト・クライアント方式で通信しているため、ホストのみが「データ・制御通信」を開始することができます。そして、ホストは複数のクライアントに対して一括で指令を送信することができますが、それらを受信したクライアントは自分に対するコマンドのみレスポンスを返します。
3.Modbusの通信プロトコルでは、伝送モードを設定することができ、ホスト・クライアント間で伝送モード共通にする必要があります。伝送モードには2種類あり、アプリケーション上での通信データをASCII文字列かバイナリデータのどちらかに設定できます。また、ASCII文字列の場合は「ASCIモード」と呼ばれ、バイナリデータの場合、「RTUモード」と呼ばれます。
➃IO-Link
IEC 61131-9で規定されたコントローラとセンサやアクチュエータを接続するための通信規格です。
上位コントローラと下位の各デバイスに直接通信させるのではなく、各々がIO-Linkホスト機を介して接続されます(図1)。
図1 IO-LINK接続例
上記の他にもう2つ特筆すべきことがあります。
1.IO-Linkの通信速度は3種類のモード(COM1 〜 3)があり、一般的に接続したデバイスに応じて自動的に切り換わります。(COM1=8 kbps、COM2=38.4 kbps、COM3=230.4 kbps)
2.IO-Link対応のセンサやアクチュエータなどのメーカーは、パラメータなどの情報が含まれた「IODDファイル」を用意しています。そのIODDファイルをIO-Linkホスト機が読み込むことで、IO-Link対応のデバイスの接続設定が完了します。この機能により、多数のデバイスを簡単に接続することが可能です。
どの通信規格を使用するのが最適?
ここまで通信規格を解説しましたが、数ある通信規格の中からどの規格にすべきか?といった疑問があるかと思います。
基本的には、使用したいコントローラやセンサが対応している規格を基準に考える必要があります。
また、その他にも
・既設システムはどの規格を使用しているのか?
・増設容易性は?また、置き換えるコストは?
・無線接続や省配線などの可能性は?
など、さまざまな要因を検討する必要があります。
将来的な拡張性や製造装置の海外輸出も視野に入れると、最適な答えを得るのは難しく、検討を進めれば進めるほど悩みも増すものです。
まずは最小限度での必要性からシステムを構築し、その後の増設容易性はPLCであればPLC間通信で補うなど、検討開始時点での要件定義をしっかり進めることをおすすめします。
変位計導入は駿河精機にご相談ください
変位計などのセンサに使用される通信規格にはさまざまなものがあるため、変位計導入時には自社に合った通信規格のものか確認することが重要です。
駿河精機では、低価格で高精度なレーザ変位計「Smart LPS 1D」をご提供しています。光学原理を用いて測定するため、小数点以下の細かい変位測定を簡単に行うことができ、アナログ器具を用いた測定方法と比べて高い精度での測定が可能です。
デモ機の貸出も行っておりますので、測定を試したい方は、お気軽に以下からお問合せください。
またSmart LPS 1Dは、レーザ光を用いて測定対象に非接触で測定ができるため、測定対象を傷つける心配がありません。複数箇所の測定をする場合でも、変位測定にかかる時間を大幅に短縮できます。
Smart LPS 1Dについて詳しくは、以下の資料をご覧ください。
製品資料
高精度変位計 Smart LPS 1D