ラップ盤の上下平行度を測るには?
Smart LACを用いた測定方法を解説
今回は、半導体ウェハの加工工程で使用されるラッピング装置を題材にして、上下定盤の平行出しについてお話しします。
従来の変位計を用いた測定方法とレーザオートコリメータ(LAC)を用いた測定方法を比較し、さらに、Smart LACを応用した測定方法で、より簡単にに同じ結果を得られる方法をご紹介します。
1.シリコンウェハのラッピング装置とは?
半導体製造工程の中間品製造に用いられる装置で、スライスされたシリコンウェハの表裏面を平行に削ることで、ウェハ全面の平行度と平坦度を整える研磨機です。ラッピング装置の構造は大きく上下ラップ盤に分けられており、上ラップ盤と下ラップ盤は独立した回転機構を持っています(図1参照)。
(図1 ウェハ・ラッピング機の概要)
ここでは、ラップ機構の概要説明に留めておきますが、最新のラッピング機になりますと、ウェハの平坦度を50 オングストローム(Å)程度に加工できるそうです。
2.上下ラップの「傾き異常」をセンサで検出する
今回のお話の要は、上ラップ盤がシリコンウェハを挟み込む際に発生する、下ラップ盤との平行度のバラツキ(傾き)を、いかにセンサで検出するかという考察です。
最新のラップ機のように、ウェハ平坦度の精度を原子レベルで追い込むレベルのお話ではないにせよ、上下ラップ盤の研磨面は常時完全に平行(平行度0.0)であることが理想的であることが容易に想像できます。例えば、上盤が下盤に対し一方向に0.01°傾いていた場合、直径 50 ㎝の上ラップ盤の半径20㎝地点では、回転中心点から約 ±35μm傾くことになります。注入するラッピング剤がどの程度そのブレを緩和してくれるのかが判りませんが、その結果、研磨後のシリコンウェハは表面が円錐形に仕上がってくることが予想できます(図2参照)。
(図2 0.01℃の傾きの悲劇)
人間が目視で識別できる角度差は0.5°程度と言われていますから、0.01°の違いを見抜ける人類はいないと思いますので、これより微小な傾きを検出するには、高解像度センサの導入が不可欠です。
平行度を測る測定方法のお話に移る前に、色々な共通の前提を仮定してみたと思います。・ シリコンウェハの直径と厚み(公差):φ300 mm x 775μm( ±25μm)
・ 上下ラップ盤の直径:φ600mm
・ 上ラップ盤の上面と底面(研磨面)の平行度は0
・ 上下ラップ盤の平行度デ-タムは下ラップ盤の上面
これらの条件で、レーザ変位計とレーザオートコリメータ(LAC)による計測方法を比較します。
A) レーザ変位計測器で上下ラップ盤の平行度を測る
この方法では、最大6台の変位計を使用した測定治具の設計が必要になります。上下ラップ盤の回転軸に向けた対向2台の変位計と所定の外周でx軸とy軸の中心に対する変位を計測する変位計4台が1つの計測治具に搭載されます(図3参照)。
(図3変位計による上下ラップ盤の平行度測定)
複数の高分解能センサを一度に扱うとなると、測定治具の設計に様々な懸念点が浮かんできます。そのうちの2点を以下にリストいたします。
・ 複数のセンサ毎に位置合わせと光軸合わせが必要になる変位計全ての光軸が下ラップ盤の上面と直交していることが光学的計測条件になるため、全6台にそれぞれに微調整が必要になります。
また、変位計には必ず固定の測定距離(W.D.)があり、上下ラップ盤の間に一定の距離が必要になります。例えば、長さ5㎝の変位計プローブのW.D.が5 ㎝だと仮定すると、上下ラップ盤の間に20㎝以上の空間を確保する必要があります。そのため、上ラップ盤の移動にも微調整が必要になります
回転中心点(原点O)からの円盤縁の高低差を測定するためには、高精度の分解能を持った変位計が必要になります。その分解能に応じて、センサの上下振動をなくさなければなりません。高精度分解能の測定精度を安定させるには、測定ジグ専用の高性能除振台が必要になります。
B)レーザオートコリメータ(LAC)で上下ラップ盤の平行度を測る
LACを用いる場合、上下ラップ盤に対向する2台で済みます。また、LACには理論上W.D.が存在せず、上下ラップ盤間の相対角度差を測定するため、ラップ盤のどの位置で測定しても同じ結果を得ることができます(図4)。これにより、測定治具の設計自由度が大幅に高まり、その大きさも縮小、さらに、除振台の設置は、「必須」ではなく「推奨」と言える程度になります。
(図4 2台のLACによる平行度測定)
さらに、LACから射出されるレーザを対向に2分岐させれば、それ一台で上下ラップ盤の平行度を測定することもできます(図5)。
(図4 平行測定を1台の対向ビーム分岐アダプタ付LACで楽々と)
3. 精密角度・傾き測定なら、駿河精機のSmart LAC
半導体装置では、ひとつの工程で発生したの突発的な異常がライン全体に影響し、歩留まりを極端に悪化させるため、予防保全や異常検知の機能が求められます。しかし、従来方法では、検知システムが高コストで、検査治具の調整に手間がかかり、自動化も難しいという課題がありました。しかし、少し視点や考え方を変えるだけで、その壁を簡単に乗り越えられるかもしれません。
駿河精機のSmart LACなら、
・ 手のひらサイズのレーザオートコリメータで、最小分解能: 0.0003度を実現
・ 対向2面の平行度を同時に測定できる対向ビーム分岐型Smart LACも用意しています。
お客様の課題解決に貢献できる可能性があります。ぜひ一度、ご相談ください。
お役立ち資料

レーザオートコリメータ Smart LAC