レーザ変位計でのワーク測定は
計測値の変化に注意!?

2024.12.12
レーザ変位計でワークを測定する場合、材質や形状、表面構造の違い、または測定環境により、測定の再現性が変化します。これは測定精度に影響し、結果として製品の品質確保に悪影響を及ぼすことがあります。
今回のコラムでは、ワークの状態や測定の環境によりレーザ変位計での計測値が変化する可能性を解説いたします。

レーザ変位計で測定した際のワークと反射プロファイル

よくあるお客様の声として、同一素材のワークなのに、うまく測定できない…、測定結果が安定しない理由がわからない…というお話があります。お話を進めていくと、それらはレーザ変位計の使い方やワークの表面状態の変化に起因していることが多くあります。

一概に言えるのは、どのような計測器でも万能ではないということです。特に非接触レーザ測定器の場合、ワークの測定結果に影響を与える要因がいくつかあり、代表的なものに、「測定環境」、「材質」、「表面構造」、「表面粗さ」、「素材の散乱能」などがあります。いずれもワーク表面で反射するレーザの反射強度や反射プロファイルに影響を与えます。その上、同じワークでもロットにより反射プロファイルが微妙に異なり、繰り返し再現性などが僅かに変化する可能性があります。以下で代表的な測定環境の違いやワークの違いによる反射ピークプロファイルの例を紹介します。

①代表的なワークの反射プロファイル

金属、セラミック、樹脂、紙などのワークの反射プロファイルを示します。
(下の図1から図6|横軸:変位値、縦軸:反射強度)

上の図1から図6を見てわかることは、軟質樹脂(図5)のように樹脂表面層で散乱しやすいものや、白セラミック(図6)のようにレーザ光がワーク内部で散乱しやすいものほど反射プロファイルの裾が広がる傾向にあることです。ピークが同じ高さでも裾が広がると輝度重心がブレやすくなるため、変位計測の精度に影響し、再現性が悪化する傾向にあります。

②ポーラス構造体の反射プロファイル

次に、ポーラス構造(注1)を持つ白セラミック、高密度黒ウレタン、低密度無色ウレタンの3つの反射プロファイルを比較します。
(下の図7から図9|横軸:変位値、縦軸:反射強度)
注1|ポーラス構造:「多孔質」とも呼ばれ、スポンジのように多数の気孔を含んだ素材

同じポーラス構造を持つ白セラミックと高密度黒ウレタンでも、白セラミックはレーザ光の内部での散乱がありますが、高密度黒ウレタンでは黒色のため散乱が小さく抑えられているため反射プロファイルの裾の広がりが抑えられていると考えられます。

一方、レーザ径より大きなポーラス構造を持つ低密度無色ウレタンでは、レーザ光がワークの奥深くへ侵入し、かつ強い散乱を起こしているため複数のピーク値が現れ、ワークの高さを正しく測定することができません。

このように、ワークが異なると観測される反射のプロファイルが変わります。また、同一ワークでもロットによる表面仕上がり(表面粗さや表面コートの仕上がり)が異なる場合、反射プロファイルが変わることが予想されます。
このようにプロファイルが変わることにより、測定値や繰り返し再現性にも影響を与えることが想定されます。

③ガラス測定の反射プロファイル

レーザ変位計でガラスの厚さを測定する場合、一般的に変位計の設置方法は、正反射方式になるようにします。しかし、何らかの理由でこの角度がずれてしまうと、ガラスからの反射プロファイルが変わることや、ガラスの表面と裏面との反射強度の比が変わることがあります。

ガラスを測定する場合、図10の様に設置するとワークからの反射は図11の様になります。しかし、何らかの理由でこの角度がずれると図12の様に反射プロファイルが変化した場合、正しい厚さを測定出来なくなります。観測される反射は左より順にベース板、ガラス裏面、ガラス表面からの反射プロファイルとなります。

図11の様に正確な角度で正反射設置がなされている場合は、表面と裏面からの反射プロファイルと反射強度がほぼ同じになっています。

しかし、正反射角度がずれていると図12のように表演と裏面の反射プロファイルや反射強度が変化します。

外乱光によるゴースト発生例

ワークの近くに別の強い光源やその他の迷光が変位計の受光口に入射されると、反射プロファイルが不明確になります。
また、外乱光の強度が高いときには、目的の反射光の強度が相対的に弱くなり測定不能になります。

以下に代表的な外乱光時の反射プロファイルを示します。

この場合、外乱光強度が強いため、赤丸部のようなプロファイルが検知され本来測定すべき反射プロファイルが外乱光に埋もれてしまうことがあります。

測定時の光環境に気を配り、変位計の周りの灯りを切ることや、専用のカバーを付けるなどして迷光を遮蔽することをお勧めしていますが、どうしても外乱光を取り除くことができない場合、レーザ変位計Smart LPS 1Dを使用することで、簡単に不要な測定領域をマスクすることができます。それにより、測定領域を限定して自動調整することが可能です。例えば、図13の外乱光の部分を図14のようにマスクすることで、本来の目標の反射プロファイルが現れてくることがあります。

反射プロファイル/ゴーストの評価や改善にはレーザ変位計Smart LPS 1D

ワークの状態や測定器の設置方法、または、測定環境は、変位計測の値に直接影響することがあり、変位計を選ぶ際も、単にスペックシートだけを見て選ぶのではなく、様々なワークや状況、環境変化への対応を見越して選定するべきなのです。

弊社のレーザ変位計Smart LPS 1Dでは、リアルタイムで反射プロファイルを観察することができます。つまり、ワーク状態や計測器の設置、光環境状態をグラフで確認しながらリアルタイムで測定方法の改善ができるのです。ワークごとのベストな状態で、測定値を正確に得ることができます。

レーザ変位計Smart LPS 1Dの詳細は、以下資料をご覧ください。

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