正反射?拡散反射?
どちらのレーザ変位計を選ぶべき?
レーザ変位計における、正反射と拡散反射とは
本題に入る前の前置きとして、レーザで角度や変位・距離を計測する装置の仕組みについてお話しします。光源から発せられたビーム光を、ワーク・対象物に反射した際のビーム光をイメージセンサに結像して、目的とする数値に置き換えます。そして、その反射光には正反射と拡散反射の2種類があります。しかし、反射ビームを捉えるイメージセンサにとっては、どちらの反射モードでも正しい反射光を計測可能な強度で届けられれば問題が起きません(図1)。
次の前置きとして、正反射と拡散反射のお話をします。理想的な正反射では、入射ビームの角度に対し反射ビームの角度が同じと分かりやすく、入射ビームの強度と反射ビームの強度は同じであると仮定されます(図2)。しかし、現実的には、光を100%反射する物質が、今のところ、存在しません。故に、測定対象物に吸収される分と拡散反射される分を輝度L0から差し引いた値が輝度L1となります(図3)。
また、正反射モードでのイメージセンサには入射ビームの角度と同じ角度を持つ反射ビームをのみを捉えるように設計されていますので、反射点で少々拡散しても正確に特定の反射ビーム光を捉えることができます。
対照的に、完全均等拡散反射のモデルでは、入射ビームに対し、均等に拡散するとされています。つまり、輝度的には、下の図4のように、入射ビーム角度に関わらず、どこから見ても反射光は同じ輝度となります。言い換えると、完全均等拡散反射をする物質では、イメージセンサで特定できる光点が存在しないことになりますが、拡散モードの変位計では、正反射モードと同じように、特定の角度のビーム光をだけを捉えるように設計されているため、正確に変位・距離を計測することが出来ます(図5)。
但し、どちらのモードでも、複数のビームが検出されることがあります。これは、測定対象物の輝拡散が強いため、近しい角度と強度のビームがイメージセンサに複数結像されることによります。どれが正しい反射なのかは、データを見ただけでは判らないのと同時に、別の反射モードで再検査する必要に迫られます。
どちらを選ぶべき?
前置きが長くなりましたが、ここから、本題に入ります。
変位計を購入する際、正反射を選ぶべきか、それとも、拡散反射モードを主とする変位計測器を選ぶべきでしょうか?
正反射モードのレーザ変位計測器を購入する際の注意点
1.反射板等の正反射が強い測定対象物では、威力を発揮します。ゴミやほこりなどの異物混入を気にすることなく測定でき、外部光遮蔽対策も特に必要のない場合が多いようです。
2.拡散反射が強い測定対象物では、反射ビーム強度が弱くなり、正反射とは異なる反射ビームを捉えてしまう可能性をぬぐえなくなり、計測した値への疑問が生じます。
3.拡散反射モードでは使用できない製品が多いようです。
拡散モードのレーザ変位計測器を購入する際の注意点
1.拡散モードが主であるため、測定可能な対象物が正反射レーザ変位計よりも幅広く、測定物特有の拡散反射に対応した詳細設定が可能である製品があります。
2.対照的に、正反射が強い測定対象物では、下図5のように、垂直の入射ビームと同じ角度で強く反射されるため、他の角度からの測定では、輝度不足で測定できない可能性があります。
3.ゴミやほこり、外部からの乱入光に比較的弱く、遮光された環境での計測を推奨されます。僅か数十μmの異物でも、測定表面の変位差を1μm単位で測定している場合には、相対的に巨大なゴミと見なすことができ、偶然誤差を引き起こします。
4.正反射モードでも使用できます。
迷った時は、拡散反射モードを選びましょう
拡散反射モードが主の変位計測器を選択する際には、正反射モードにも対応させることができるかを確認しておくことをお勧めします。それにより、多くの対象物の測定に臨機対応させることができます。
拡散反射モードを正反射モードへ切り替える方法は、それほど難しくなく、設置角度を垂直から任意の角度でずらし、入射ビームを正反射させイメージセンサへ投射する方法をとります。
拡散反射方式の変位計を使用する際の注意点
1.設置角度
原則、測定対象物表面を水平と仮定した際の入射ビーム角度は、その垂直、90度方向となります(図6)。多くの製品が、垂直設置を基本にして調整され出荷されているため、誤って角度が付いている場合には、正確な測定をしてくれません。例えば、下図7のように0.5度垂直からずれて設置されているの変位計の場合、仮にワーキングディスタンスが30㎜とすると、1μmの過失誤差が生じることになりますので、目視で角度を確認するのは危険です。
2.正反射モードへの切り替え
上記の図6で示したとおりに設置した際、鏡やなど、測定対象物の反射率が高い場合、拡散せずに垂直に反射されることになり、測定不可になります。また、ガラスやシリコンウェハの場合、拡散せずに透過してしまう場合にも、測定不可が発生します。
その後、ソフトウェアで測定データを傾き角度分の補正をかければ、拡散反射が主モードの変位測定器でも、鏡面や透過素材を測定でき、ごみ・ほこり、外部散乱光にも強い正反射モードで使用することができます。
拡散反射・正反射、どちらもいける
駿河精機のレーザ変位計
拡散モードが主のレーザ変位計H810は、正反射モードでも使用できるよう設計されています。
専用ソフトウェアによる簡単な設定変更で、鏡面体やガラス、強く拡散反射する白セラミックや反射率の低い黒ゴムなど、様々な、測定対象の変位を捉えることができます。
また、ビーム形状も円形と楕円形の2種類を用意いたしました。対象物の形状や大きさにより使い分けることができ、さらに便利に変位計測のお悩みを解決します。
製品資料

高精度変位計 Smart LPS 1D