変位測定の難点:
傾き角度による誤差とその対策
変位測定の誤差原因
高価な高精度変位計を用いても、ワークや測定器が傾いていると正しく測定できません。例えば、完全に水平なワークを測定する際に、作動距離(W.D.)= 50 mmの変位計が1度傾いた場合、単純計算しますと、系統誤差が発生します(図1)。または、長さ50 mmのワークが0.1度傾いていると、ワークの両端で+87μmの変位差が発生することになります(図2)。
変位計の傾きは目視でも確認できそうですが、ワークの傾きは目の錯覚等が伴うため、目視による確認は非常に危険です。また、個々の系統誤差は微細であっても、それらが複合的に累積すると、最終的な品質評価に悪影響を及ぼす可能性があります。
品質判定NGに至る誤差の原因
「測定器が傾いてしまった」「底面に鉄くずが挟まり、ワークが傾いている」などは偶然誤差に分類されるため、本稿では取り上げません。これらは、メンテナンスを丁寧に行い、作業場を常に清潔に保つことで、排除できます。
測定器やワークを移動させる際、駆動機構の走り平行度などの運動精度が測定結果に影響します。そのため、あらかじめ軸駆動の傾きや上下運動を把握しておく必要があります。例えば、1軸ステージの走り平行度が± 25 μmの場合でも、原点から見てどの停止位置で+ 25 μmになるのか、または全ストローク中のどの位置で± 0.0 μmとなるのかを事前確認しておくことが求められます。
さらに、駆動システムの運動誤差は真直度や平行度だけでなく、ステージのマウント面のヨーイングやピッチングも重大な誤差原因となります。
また、2軸以上のステージを組み合わせてワークや測定器を移動させる場合、多軸ステージの誤差の累積に関しては、メーカーは保証しません。そのため、測定対象物の品質公差に応じて、多軸駆動システムの運動精度を把握しておく必要があります。
変位計測においても、駆動システムの運動誤差は繰り返し発生する系統誤差です。これを抑制するためには、超高精度 / 高剛性のステージを選択し、駆動機構の誤差を最小化するか、各測定点での系統誤差を後処理で補正して正確な測定値を得る必要があります。
運動精度の悪影響排除‐角度補正
ワークの測定地点での傾き測定には、変位計による三点測定よりも、レーザオートコリメータ(LAC)を用いる方法の方が、高精度かつコストも格段に低く、手軽に行えます。(図2:変位計を3台用いた方法とLACを1台用いた方法の比較)
ただし、変位計とLACは同じ地点を同時に測定できないため、別々に測定点ごとに角度と変位を測定します。その後、測定点ごとの傾きを考慮し、ワークの大きさや形状による影響を補正します。これにより、測定結果の正確性を確保します。
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