精密測定と測定器の温度特性についての考察

2025.06.14
測定誤差には、統計誤差、偶然誤差、そして、過失誤差の3つの種類に分類されます。
では、測定器の温度特性はどの分類に属するのでしょうか?

少々唐突ですが、この「温度特性」の話題は、精密計測の現場でしばしば議論の的となります。本コラムでは、精密測定における環境温度変化の影響とその重要性、そしてその対応について考察していきます。

仮説:精密計測において測定器の温度特性は、重要なファクターではない。

これについて少々補足します。ここでの主張は、「温度特性」の無視ではなく、「計測器の温度特性による誤差は、計測環境を適切に管理していれば軽視できる」、という主張が今回のメインテーマです。

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温度特性とは?

簡単にいいますと、部材の熱膨張による影響を指します。温度が上昇すれば部材が膨張し、下降すれば収縮します。これにより、筐体の金属、樹脂やゴムに微妙な歪みが生じれば、当然、個々の測定器の結果にも影響が出ることが予想できます。

測定器の温度特性による誤差

測定器の温度特性は、弊社の場合、一例として以下のようにご案内しています。

  Smart LPS 1D H810シリーズの温度特性:0.01% of F.S./℃  

—  H810-15R-080SA/WA(測定レンジ±15 mm) : ±3μm/℃  —

—  H810-40R-150SA/WA(測定レンジ±40 mm) : ±8μm/℃  —

これらは、1℃の温度差で±3 μmや±8 μmの誤差が出ることを意味します。因みに、基準温度は23℃です。

これらの数字を一見すると、このような誤差は大きな問題に思えるかもしれません。しかし、そもそも、数 μmの誤差が問題になる測定において、内部温度が測定中に1℃上昇することがあってはならないのです。たとえば、とある品質検査の計測時間が1回60秒と仮定して、その単位時間内で測定器の内部温度を1℃上昇させるには、周辺気温の急上昇や、何らかの高熱源体が隣接するなど、異常で設計の想定外な環境であると思われます。

高性能測定器 ≠ 小さい温度特性

温度特性が小さい測定器ほど、よい測定器である」とは単純に言えません。取り付け方法ひとつで温度特性は変わるため、現実問題として、「±8μm/℃」という数値だけで測定器の良し悪しを判断するのは早計です。被測定物自体も温度変化の影響を受けやすいという点を忘れてはならず、精密計測においては、各測定器の性能を発揮できる「測定環境」と「対象物」の温度管理が重要です。

測定器の温度特性に対する留意点

暖機運転の必要性

一般的な室内空調環境下で、測定器内部の温度が短時間に1℃上昇することは考えにくいですが、例外的に、レーザモジュールや電源系ICなどの発熱する電子部品を内蔵している場合、電源投入後に3~5℃程度、内部温度が上昇します。弊社では内部温度が安定するまで30分程度の暖機運転を推奨しています。

原点復帰と測定器の基準値の取得

暖機運転後は、原点復帰と同時に計測器の基準値を取得してください。理想的には、機構側の原点復帰を行うたびに、測定器のゼロリセットも行うべきですが、作業効率の観点から省略されることもあります。その場合でも、測定器内部の温度変化には注意を払い、1℃以上の温度変化があった際には必ず再キャリブレーションを行ってください。

温度特性は統計誤差

精密測定の現場では、誤差要因を排除する日々の努力が欠かせません。振動対策やレーザ測定器使用時の光害防止、ゴミやホコリの除去に至るまで、あらゆる誤差要因除去対策をされていると思います。

その中で、計測環境の温度安定化も重要な一環です。測定器の温度特性に過剰にこだわるのではなく、それを「統計的な誤差」として認識しつつ、本質的な環境管理に注力することが、精密計測の精度を高める鍵であると言えるでしょう。             

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